旅立つ 想起・第4話

こんにちは。向日葵です。
向日葵、生きてます!

遅い新年のご挨拶になりますが、今年もどうぞよろしくお願いします。

昨年は更新しないでごめんなさい。
からだ中探したけど、やる気スイッチがみつかりませんでした。

でも昨年末辺りから「そろそろ書いてみようかなー」って気持ちになってきたので、この小さなやる気を逃さずに頑張って書いてみようと思います。

前回の更新から期間が開きすぎて、書いている私ですら前回までの話の内容を忘れちゃってたので、みなさんも忘れちゃってますよね。

下に今までの作品の置いてある場所を貼っておくので、過去を振り返りつつ、新作も読んでもらえるとうれしいです。


【旅立つ】
再会・家族・予感・夢現     向日葵の咲く丘で
想起   第1話第2話第3話


今年こそ、頑張ります!←狼少年じゃないよ。


P.S.拍手くださったみなさま。本当にありがとうございます。
   時間のあるときに改めてお返事させていただきます。お返事遅くなってごめんなさい。



***


 ガタタタン ガタタタン ガタタタン
 
 僕とアスカは東日本第二国際空港に向かう電車に揺られていた。
 東日本第二国際空港は第三新東京市から直線距離で50kmほどの位置にある。かつてそこは静岡市と呼ばれていたらしい。
 第三新東京市から東日本第二国際空港までは直通電車があるので、それに乗ってしまえば、僕らはただ車輌に揺られていれば良かった。

 赤い海から戻ってきてまだそれほど長い時間を経ていない今、海外へ旅行しようという人はほどんどなく、空港利用者の多くがビジネスを目的としている。そのため、空港へ向かうこの電車内も、僕らの他にはスーツ姿の人がチラホラいるだけだった。

 静かな車内で僕とアスカは少し間を空けて座っている。自分で僕について来いと言ったわりにアスカは何を話すわけでもなく、ただじっと車窓を見つめていた。

 アスカはどんな想いで窓の外の景色を眺めているのか。「もうこれで日本ともお別れ」そんなことを考えているのかもしれない。

 アスカの日本での思い出って何だろう?
 苦しかったこと?辛かったこと?悲しかったこと?寂しかったこと?
 アスカにとって日本は不幸な思い出しかない、記憶から消してしまいたい場所なのだろうか?

 ほんのひと時でも楽しかったと思える瞬間があったなら、日本での嫌な思い出も少しはマシなものになると思うのに。

 僕は目だけを動かしてチラッとアスカの様子を窺ったけど、アスカは変わらず前を見つめたままだった。

 自分勝手かも知れないけど、ミサトさんや僕や学校のみんなと過ごした時間は無駄ではなかったと、アスカにはそう思ってもらいたい。僕はアスカと過ごした日々のどんなことも全部忘れられないし、忘れちゃいけないと思ってる。きっとそれが今の僕にできる最大限の罪滅ぼしだと思うから。
 でもそれだけじゃない。楽しかった日も、辛かった日も、苦しかったときも、いがみ合った日も、僕はアスカと過ごした全部が嬉しくてたまらないんだ。

「アスカ」

「ん?」

 僕の呼びかけにアスカはわずかに顔を傾け僕を一瞥すると、また正面に視線を戻した。

「アスカはさ」

「……」

「アスカは日本に来たこと、後悔してる?」

「後悔?」

「うん。後悔」

「そんなこと聞いてどうするの?」

 怒るわけでもなく呆れるわけでもなく、アスカは正面を向いたまま、僕の質問にあくまでも冷静だった。

「どうするって僕はただ……ただアスカが日本に来てから大変なことばかりだったから、もしかしてアスカは日本に来たことを後悔してて、それで急にドイツに帰ることにしたんじゃないかってずっと気になって」

「まあね」

「そっか。やっぱりそっか」

「でもそれだけが理由じゃないわ」

「じゃあ、何で?」

「何で?」

 この電車に乗り込んでから、初めてアスカが僕の方に顔を向けた。何も言わずじっと僕を見てる。それもすごく寂しそうな、辛そうな、そんな瞳をして。

 このとき見たアスカの表情が、なぜか僕にはアスカの想いの全てのように感じられた。アスカは言葉では何も言わなかったけど、つまりそれが答えなんだと僕にはわかった。

 そうか。やっぱり僕のせいなのか。僕のことがまだ許せないんだね。僕のことが嫌いだから、だからドイツへ帰るんだね。ミサトさんや学校のみんなと離れる決断をさせてしまったのは、僕なんだね。

 アスカ、ごめんね。

 アスカの心の内に気づいてしまった今、僕がアスカにかけられる言葉なんて何もない。僕の言葉は慰めにも励ましにもならず、アスカを苦しめるだけのもの。もうこれ以上アスカを苦しめてはいけない。

 僕たちは再び静かに正面を向いた。



 間もなくして僕たちを乗せた東日本第二国際空港駅ゆきの電車は、ついに目的地に到着した。
 電車を下りてからも僕たちは黙ったまま、アスカが前を僕が少し後ろを、僕がアスカについて行くように歩く。

 アスカの後ろを追いかけるように歩きながら、なんだか可笑しくなってきた。
 こんな風に気まずい気分でアスカと一緒に歩くのももう最後なんだな、なんて。こんなことを寂しく感じてしまう僕はちょっとおかしいのかもしれない。

 思わず顔が綻んだ。

「何?」

 僕の異変に気がついたのか、アスカが不審そうな顔をして振り向いた。

「え? あ、何でもないよ」

 慌てて手を振り平静を装った僕に納得はしていないようだったけど、アスカは「ふーん」とだけ言って、再び僕の前を歩きだした。

 あと少しでこの後ろ姿ともお別れか。明日からはきっと毎日が静かに淡々と過ぎてゆくんだろう。
 アスカとケンカしたり、アスカに怒られたり、ふくれっ面したアスカとご飯を食べたり、もうそんなこともできなくなる。
 そんなアスカとの関係に正直嫌気が差したときもあったけど、今はただただ寂しい。

 アスカは今日ドイツへ帰る。

 アスカが僕の前からいなくなる。


<つづく>
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by himahimari | 2015-01-15 14:50 | 私の作品(サイト未格納)